シアターサウンドとハイファイサウンド

--やさしいホームシアターづくり--

タイトル画像

やさしいホームシアターづくり


ホームシアターづくりの大きなポイントはサウンド関係です。
では、オーディオで追求していたハイファイサウンドとホームシアターに要求されるシアターサウンドは同じものなのでしょうか。

ハイファイサウンドは、原音を充実に再生することを目指します。
それに対し、シアターサウンドは映画の内容を より強調する為に使用されるのです。

自然の音は、軽さを感じる音といえます。
大きな音で迫力や振動を感じても、重苦しさはあまり感じないのです。

飛行機の着陸のエンジン音やクルマのエンジン音など、本物の音は軽く遠くまで届いていることに気付くのではないでしょうか。
この遠くまで届くという点も自然の音の特徴です。

ハイファイサウンドの基本は、この自然の音を出来るだけ忠実に再生することが目標です。
音の要素には、音域の広さ・位相の正確さ・ダイナミックレンジの広さ そして 反応の速さ があります。

音域の広さは、如何に高い音から低い音までを再生できるかという要素で、周波数特性という数値で表されます。
また、この要素には全ての音の高さで均一な音量を出すことも含まれます。
特にスピーカーは周波数によって音の出る大きさが変わる事が多いので、より均一に出るほうが優秀といえます。

位相の正確さは、明確なデータは提示されないことが多いのですが、スピーカーを複数使用する場合には非常に大切な要素になります。
位相は聞きなれない言葉ですが、時間軸に対する音の波のズレのことで、音の場所を知る為に重要な要素です。
人間の耳もこの位相差を利用して音の場所を判断しています。
ステレオは左右から出る音の位相の差による干渉によって、スピーカー正面以外の色々な場所から音が出ているように聞こえるのです。

ステレオで片方のチャンネルだけをプラスとマイナスを逆につなぐと異常に広がった音に聞こえるのは、この位相が逆になっている為なのです。
現実的には、スピーカー(アンプ等も同じです)の位相は音の高さによって違ってくるので、2つのスピーカーを出来るだけ同じにする(同じ製品でもバラツキを少なくする)ことが大きなポイントになります。

ダイナミックレンジの広さは、大きな音から小さな音までの幅の広さのことです。
小さな音はノイズによって決まり、大きな音は最大入力や音圧レベルといったデータから推測されます。
ノイズはアンプだけでなく、スピーカーでも発生します。
これも、音の高さによって広さが違ってきるので、音の高さに関わらず満遍なく広いことがポイントになります。

ただ、大きな音というのは、部屋の中で出す音の大きさで制限を受ける場合が多いのです。
防音対策を行った部屋以外では、あまり上限を気にする必要はないでしょう。
逆に小さい音、つまりノイズの小ささが重要といえるのです。
小さい音まで正確に再生できれば、相対的にダイナミックレンジは広がることになるのです。

音の反応の速さ、これが原音再生には最も必要な要素です。
何しろ、自然の音は音速を無視すれば無限大の反応の速さがあるのです。
しかし、アンプは中を流れる電流の速さで遅れ、スピーカーは電流を受けて動き出すまでに時間がかかります。
アンプは比較的速いので、それほど問題になりませんが、スピーカーの反応の遅れは大きな影響があります。

高温を再生するトゥイーターは振動部分が非常に軽い為に反応は速いのですが、低音を再生するウーハーは振動板が重いために かなり反応が遅れます。
反応が遅れることは、音の波形が崩れることに直結しています。
つまり、反応の遅さが音のリアリティーを失わせている大きな要素なのです。

また、反応が早いスピーカーは 自然の音と同様に遠くまで音が届くという傾向があります。
これは、音の鋭い音に対する反応がいいため、より正確に波形を伝えられ、波形が小さくなっても音が分かりやすい為だと思われます。
(ピーク音が鈍ってしまうと、音が小さくなったら他の音に埋もれやすいですが、ピーク音が残っていたら多少音が小さくなってもピーク部分が聞こえるのです。)

ここまでは、ハイファイの基本です。
この要素の中で、何を一番重視するかによってハイファイ追求の方向性、つまり好みの音が分かれていたのです。


では、シアターサウンドに要求されるのは、どんな要素になるのでしょうか。
基本的にはハイファイサウンドと同じ要素が必要ですが、重視されるポイントには大きな違いがあるようです。

音域の広さについては、スーパーウーハーの専用チャンネルがあるために、低音に対する要求はそれほど高くはありませんが、スーパーウーハーを含めたトータルでは広さが必要です。
特に低音域については、振動に近いレベルの音まで再生する必要があるために重要です。

位相の正確さについては、音の位置をスピーカーの位置に置き換えているので、それほど正確である必要は、一見なさそうです。
しかし、スピーカーの数が多くなっていますから、位相がずれていると音の干渉によって音の位置がばらばらになってしまう可能性がより高くなるとも言えるのです。
ですから、スーパーウーハー以外のスピーカーを出来るだけ同じ条件にすることが重要です。

ダイナミックレンジの広さについては、広いほど良いといえます。
特に衝撃音などは、映画では演出上大きなポイントとなるので広さが必要でしょう。
しかし、これもハイファイ同様に部屋の遮音性も大切なので、一般的にはそれほど問題にはなりません。
小さい音は気配を感じるような微妙なシーンで大切で、こちらもハイファイと同様です。

音の反応の速さ、これがシアターサウンドとハイファイサウンドの大きな違いになりそうです。
自然の音と映画の音の大きな違いは、音の軽さにあります。

映画のサウンドでは迫力を強調する為に、意図的に自然な音の軽さを無くした音が採用されます。
拳銃の音が典型的で、ニュースなどで聞く軽い音が本来の拳銃の音なのに、映画では迫力のある重い拳銃の音が採用されます。
飛行機のエンジン音にしても、本来の甲高い音より、重たさを強調した音になっています。

このようなシアターサウンドを再生するためには、あまり反応が速くないスピーカーの方が適しているように思えるのです。
特に、アクションやSF映画主体の場合、反応の速さより音の重さで迫力を出しているので、軽い音では迫力が薄れてしまう可能性が高くなります。

しかし、台詞主体の静かな映画の場合、声のリアリティーも大切になります。
人の声をリアルに再生するのは、ハイファイの反応の速い音が有利です。


シアターサウンドは、主に見る映画のジャンルによって、求めるサウンドが異なってくるのです。
アクションやSF映画では低音の重さを重視したサウンドが大切です。
逆に台詞主体の比較的静かな映画では、声がクリアーに再生できることがポイントになります。

考えてみれば、ハイファイサウンドといっても反応の速さを重視したシステムを組む人達は少数派だったので、主流の迫力のある音を前提にシアターサウンドが構成されるのも当然とはいえますね。


では、音の各要素にポイントを絞ったスピーカーとは どんなスピーカーなのか 考えてみましょう。
(ちょっと説明過多になったので、難しく感じたら 映画のジャンル別、スピーカーとサラウンド方式選び に飛んでください)

                                                     2009年2月13日更新

    

音の要素とスピーカーの選び方1

音の要素とスピーカーの選び方2

映画のジャンル別、スピーカーとサラウンド方式選び

やさしいホームシアターづくりtop シアタールームのつくり方 アクセサリーの種類と使いこなし
ホームシアター用語集 映像機器を知る 音響機器を知る

 

copyright 2007-2016 kazu All Rights Reserved